修羅は戯れに拳を振るう

「へぇ…」

青年を見ながら、莉々は薄く笑う。

大体の察しがついた。

親方を倒したのがこの青年である事、高度な技である裏当てを使えるという事はなかなかの空手の使い手だという事。

「貴方、名前は?」

「南雲 龍宇だ。君は?」

「貴方、私を知らないの?」

驚いたように、莉々は目を丸くした。

「この格闘特区でストリートファイトオッズランキング1位の織葉 莉々よ!」

「……すまない、知らない。この街に来たのは今日の夕方の事なんでな」

「…あっそ」

カチンときた。

莉々の事を知らない事、莉々の獲物である親方を先に倒してしまった事、何もかも。