確かこの親方は、莉々を探していたのではなかったか。

何故こんな路上で、車に轢かれたヒキガエルのように横たわっているのか。

「ちょっと貴方。何でこんな所に寝ているのかしら?」

親方の傍らにしゃがみ、莉々は訊ねる。

「私を探していたんじゃないの?一体誰にやられたの?」

親方はまだ意識朦朧としているというのに、そんな事は御構い無しに矢継ぎ早に質問を浴びせかける莉々。

と。

「少し休ませてやってくれないか」

背後で声がした。

莉々が振り向くと、そこには白い袖無しの空手着を纏った青年。

黒髪短髪、今時の流行に逆らうような、太く凛々しい眉の下の瞳からは、強い意思が感じられた。

「裏当てを受けたばかりでダメージが抜けていない。話す元気もない筈だ」