修羅は戯れに拳を振るう

言葉はない。

洪の攻めは続く。

瞬きの間に繰り出される、前に踏み出しながら突く形意拳の中段突き、半歩崩拳(パンプポンケン)!

ただの中段突きに、龍宇の体が吹き飛ぶ。

間髪入れず間合いを詰めた洪は、背面部で体当たりし内部の勁と外部の打撃を同時に与える鉄山靠(てつざんこう)!

龍宇はしっかりとガードし、これは何とか受け止めた。

「形意拳に八極拳か。一流派のみに留めない辺りは流石だな」

「高名な龍娘流も、総合中国拳法だからな」

そう言って洪は、間合いの詰まった状態から呼吸法や重心移動、打突力、意識のコントロールなどを用いて最小の動作で最大の威力を出す!

ワンインチパンチとも呼ばれる技、寸勁(すんけい)!

ほぼ零距離の状態から、一撃で龍宇が吹き飛ばされた!