修羅は戯れに拳を振るう

店内で出た紹興酒や老酒の瓶が入った箱を積み上げられた、酒家の裏手。

そのスペースで、龍宇と洪は対峙する。

翡翠色の上着を脱ぎ捨てた洪。

筋肉で膨れ上がった体ではないが、無駄な肉は削ぎ落とされ、言うなれば鍛え抜かれた銘刀のような印象を与える肉体だった。

龍宇は腰の黒帯を締め直す。

互い言葉はない。

洪は運足(フットワーク)を使い、龍宇はベタ足のまま、静かに立ち合いは始まる。

まずは洪の鋭い足刀!

的確に喉元に打ち込まれるのを、龍宇は片手で叩き落とした。

…速い。

蹴りは大きなモーションで、死角から狙うかフェイントを入れないと単発では入りにくいものだが、それでも叩き落とすのがやっとだった。

中国拳法や功夫(カンフー)は、スピードで相手を翻弄し、手数で勝負を決める。

まさにお手本のような足刀だった。