修羅は戯れに拳を振るう

「食事をしに来た訳じゃない」

龍宇は別段気を悪くする事もなく、男に返した。

「アンタに用があって来た」

「俺に?」

訝しげな顔をする男。

「30分ほど前に、柄の悪い男達が来ただろう」

龍宇は随分前から、この酒家の様子を見ていた。

このチャイナタウンをシマとする連中だろうか、チャイニーズマフィアと見られる連中が、酒家で一杯やろうとやって来たのを、男はたった一人で応対した。

明らかに堅気でない連中は、他の客の迷惑になるので入店を断ると。

当然ならず者どもだ、そんな言い分を、はいそうですかと承諾する筈もない。

店の前でいざこざが始まった訳だが。

「五人だったか、十人だったか。アンタはそれを全員片付けた」

龍宇は男の顔を見る。

「両手を使わず、足技だけで」