修羅は戯れに拳を振るう

しかし。

「金儲けの為に闘う気はない」

頭陀袋を肩に、龍宇は言い放つ。

抜けるような青空に恵まれた朝。

龍宇は格闘特区を出る事にした。

「ずっとここにいてくれればいいのに…住む場所や闘う相手も便宜しますよ?」

莉々が名残惜しそうに言う。

龍宇が格闘特区にいれば、ORIHAも格闘特区も経済的に潤う。

だが莉々が龍宇に残ってほしかったのは、会社の為より個人的な想いの方が強いのだが。

無論、龍宇はそれでも丁重に断る。

「ここに留まれば、俺はここで止まってしまう。ここに残れば、俺は最強と呼ばれてしまうかもしれない。井の中の蛙かもしれないのにだ」