修羅は戯れに拳を振るう

ゆっくりと息を吐き、緊張していた全身の筋肉を緩める。

全身血塗れ、傷だらけだ。

白い空手着もあちこち解れ、返り血を浴びている。

とても活人拳の使い手とは呼べぬ、殺伐とした姿。

「龍宇さん!」

莉々が駆け寄ってきた。

「やりましたね!修羅に勝ちましたね!」

「…紙一重だった。咄嗟の閃きがなければ…修羅の勁を上乗せできなければ、負けていた」

莉々の言葉にも喜ぶ事なく、龍宇は謙虚に言う。

決して実力で勝利したとは思っていない。

そして、修羅の言い分より己が正しかったとは思っていない。

事実、殺意に翻弄されそうになった己がいるのだから。

まだまだ、未熟。