修羅は戯れに拳を振るう

「それで…」

莉々はゆっくりと歩き始める。

「今日はどういったご用件で?」

「またまた…莉々ちゃんも人が悪いアル…」

鬼龍も歩を進める。

向かい合ったまま、円を描くようにゆっくりと。

その只ならぬ雰囲気に、道行く人々が自然とギャラリーとなって人だかりを作る。

夕城 鬼龍vs織葉 莉々。

降って湧いた黄金カードだ。

今夜この場に居合わせた者達は運がいい。

「はぁっ!」

「やぁっ!」

美貌も実力も甲乙付け難いこの二人の、本気の激突が見られるのだから。

心意六合拳の一手、突き上げと膝蹴りを同時に行う迎門鉄臂(げいもんてっぴ)を繰り出す鬼龍と、ムエタイの回転肘打ちソーク・クラブを放つ莉々。

両者の打撃は激突、威力が相殺され、その場で押し合う形となった。