修羅は戯れに拳を振るう

「探したアルよ、スマホにかけても捕まらなくて、本社に電話したら、この辺りをうろついてるんじゃないかと聞いて…」

「ごめんなさい、父が口煩いから普段スマホは持ち歩かなくて」

呆れた顔の鬼龍に、莉々は苦笑する。

「道場の方で、またご入用でしたか?」

「そんなに金の無心ばかりするほど礼儀知らずじゃないアル」

今度は鬼龍が苦笑いする。

「久し振りに学園の方で休暇を貰えたから、たまには格闘特区の方にも顔を出そうと思ったアル。新婚の頃は、亭主と一緒に道場破りに回ったものアル」

昔を懐かしむように言う鬼龍。

その当時は、格闘特区に存在した武術の道場やジムが軒並み潰され、あわや格闘特区ゴーストタウン化かと、ORIHA経営陣は青い顏をしたものである。

「もう勘弁して下さいね、格闘特区もやっと軌道に乗り始めたんだから」

もう一度苦笑いする莉々。