修羅は戯れに拳を振るう

相手を殺す方法を学ぶ事によって、どうすれば殺されてしまうかを学ぶ。

殺されてしまう状況を知る事で、殺されないように立ち回る事ができるようになる。

突き詰めていくと、どうすれば殺そうとするか、殺されやすくなるかという観点まで広げる事が出来る。

戦いの方法を学ぶ段階において、足運びや筋肉の動き、目の動き、果ては息遣いや気配、殺気などというものを敏感に感じ取るように心を研ぎ澄ます段階において、更に一歩踏み込む事で、日常においての争い事の気配なども敏感に察知する事ができるようになる。

そうなれば、回避する事も機先を制して抑える事も容易だろう。

更に突き詰めると、そこに争いの火種を生み出す前に、生み出されてしまう前に、何も起こさない事すら可能になる。

それが武、武術、殺人術を武道にする為の心得なのでは無いか。

強さとは戦いに於ける『人殺しの上手さ』ではない。

状況を自由自在に丸くする事こそ、本当の武道なのではないか。