闘いを終え、ギャラリーの中から歩み出てきた龍宇。

その表情は険しい。

「り、龍宇さん」

闘いの中での松岡とのやり取りを見ていたのだろう。

流石の莉々もかける言葉が見当たらない。

『お前は道を踏み外す』と、現役の暗殺者から言い放たれた龍宇の心境や如何に。

ましてや師匠の修羅の件も解決していない今この時に。

家柄も格闘家としても恵まれ、過酷な修行環境に晒された事のない『箱入り格闘家』の莉々が、龍宇に何を声掛けすればいいというのか。

何も言えない。

何も言わない。

ただ、無言で歩く龍宇の後を、黙々とついて行く。