修羅は戯れに拳を振るう

と。

「莉々ちゃん」

声をかけられ、莉々は振り向く。

立っていたのはチャイナドレスの女性だった。

長い黒髪をポニーテールにした、切れ長の瞳の猫科の猛獣を彷彿とさせる顔立ち。

スタイルもそれに見合ったしなやかなものだが、どういう訳かバストだけは、不釣り合いなほどに大きい。

どうしてこんなアンバランスな体型になったのだろう。

「鬼龍さんっ!」

莉々は目を丸くする。

夕城 鬼龍(ゆうしろ カイラン)。

天神地区で教師をやっている女性で、同地区でも有名な武家の奥方を務める。

母親は天神地区にその人ありと謳われた龍娘流中国拳法の使い手であり、一代にして一流派を興した開祖でもある。

龍娘流道場を立ち上げる際に、出資元としてORIHAに頭を下げに行き、その際、出向いた際には莉々に稽古を付けるという約束で、ORIHAは資金提供をしたのだ。