修羅は戯れに拳を振るう

自制心のない人間が、『ブレーキのかけられない者』だとするならば、松岡には『ブレーキがない』。

普段は制限速度で走っていても、いざとなれば信じ難い速度で走り始め、猛スピードで激突する。

路上にブレーキ痕すら残さず、全速力で衝突する。

それが殺意の素質を持つ者。

「おめぇも出来るだろ…?」

「ふざけるな!」

標的の側頭部に手刀を叩きつける手刀横顔面打ちを繰り出す龍宇!

松岡はこれも紙一重で躱す。

「自制心があろうとなかろうと、人を殺める事を何とも思わない者は獣であり畜生同然。そんなケダモノと一緒にするな」

「わかってねぇな」

くくっ、と引き笑いしながら、松岡は言った。

「人間がそんな上等な存在だと思ってんのか?人間だって一皮剥きゃあ、虎狼と同じケダモノなんたぜ?」