「なら何だ」

龍宇は松岡に詰め寄り、鋭い後ろ回し蹴り!

龍宇の爪先が、松岡の鼻先一寸を通過していった。

「俺に殺意の素質があるという根拠は何だ」

「……」

鼻を人差し指で擦りながら、松岡は呟いた。

「その自制心を、いともあっさり放棄できる。普段は理性的でモラルを説きながら、いざとなりゃ躊躇なく相手を殺す。それが殺意の素質だ」

そもそも迷いがある時点で、殺す意思はない。

殺意とは、『明確なる殺害の意思』。

迷っているのならば明確ではないという事。

大抵の人間は、殺害に至る時に迷う。

そして憤怒の限界に達し、殺害に至る。

「おめぇはその迷いなく、殺意に達する素質があるってんだ。言ってみりゃ俺寄りの人間だな」