修羅は戯れに拳を振るう

白い空手着。

汚れも穢れもない、まさしく健全な肉体に健全な魂の宿る武道家の象徴。

しかし。

「おめぇ…」

ユラリと松岡は動く。

「俺と同じ匂いがするぜ?」

「何?」

龍宇の眉がピクリと動いた。

「自分は真っ当な武道家だと思ってんのかもしれねぇがよ。おめぇからも血の匂いがする」

「馬鹿な。一緒にするな。俺は一度たりとも人を殺めた事など…」

「分かるんだよ」

龍宇の言葉を制して、松岡は言った。