修羅は戯れに拳を振るう

「でも私は今回は棄権かな…この怪我じゃちょっと…」

ORIHAの広告塔としても、最強を目指す闘士としても、残念そうに唇を噛む莉々。

「何、カーニバルは毎年開催される。怪我を治してまた来年挑戦すればいい」

龍娘が莉々の肩を叩いた。

「こうなったら私の分まで、龍宇さんに頑張ってもらうしかないですね」

莉々が龍宇に言うが。

「待ってくれ」

龍宇は莉々を制した。

「確かに腕試しの意味合いもあったが、俺は師匠の行方を追って格闘特区に来ただけだ。そのカーニバルとやらには興味がない。俺は自分を高めてくれる相手としか闘いたくない」

強さをひけらかしたり、見世物になる為に拳を振るう気はない。

礼儀正しく謙虚で剛毅木訥な龍宇らしい。