修羅は戯れに拳を振るう

「何だお前は」

振り向くなり不機嫌な顔をする龍娘。

折角日本で最初の道場破りを成功させたというのに、水を差されたといった所か。

「他人に名を訊く前に名乗るのが、この国の礼儀だそうだな。ならば名乗ってやろう。李 龍娘、かの李 書文に続く未来の拳聖だ」

「……」

ぶち上げた龍娘の発言にも微動だにせず。

「修羅だ」

男は名乗った。

「珍妙な名だな…法名…という訳でもないのか」

「ああ…僧ではないのでな…ところで」

修羅は龍娘の顔を見る。

「お前、李 書文に続く未来の拳聖といったな」

「如何にも。サインなら受け付けてやるぞ」

フフンと鼻で笑う龍娘。

「ならば問う」

修羅は真っ直ぐに龍娘を睨んだ。

「李 書文が拳聖と呼ばれながら、人殺しをした事があるのは知っているか?」