この道場は制覇した。

龍娘は満足げに笑みを浮かべる。

日本の武道、恐れるに足りず。

この分だと早いうちに、日本での武者修行は終わりそうだ。

まだ天神地区に名を轟かせる事になる隻眼の剣豪や、身の内に『龍』を眠らせる少年の存在すら知らぬこの頃の龍娘は、軽々しくそんな事を思ったりしていたのだが。

「ん…先客がいたか…もうこの道場の看板は下ろされたのか?」

背後でそんな声がして、龍娘は振り向いた。

男が立っていた。

黒い空手着、浅黒く焼けた肌と隆起した筋肉は、数珠を首から下げているからとて、決して坊主ではない事を物語っていた。