修羅は戯れに拳を振るう

莉々を一糸纏わぬ姿にして仰向けに寝かせる。

龍娘は繊細な手つきで莉々の体を触診。

「吐血したと聞いていたから、肺か肝臓辺りにダメージを受けたかと思ってたが…損傷は小さいらしいな。肋骨は三本…まぁこれも綺麗に折れている。治れば前より丈夫になるくらいのものだ、心配はいらん」

そう言って龍娘は、細い鍼を取り出す。

鍼治療は、身体の特定の点を刺激する為に専用の鍼を生体に刺入または接触する治療法である。

中国医学等の古典的な理論に基づいており、中国・日本・韓国でそれぞれ発達した。

このうち韓国が特に鍼を重視し、『一鍼二灸三薬』と言われている。

中国医学では、経穴を刺激する事で経絡として知られる道を通る『氣』の流れの異常を正すとされる。

「莉々は闘士であると同時に、この街では偶像としての一面もある…できるだけ体に傷痕が残らんようにしてやる。お前のファンが減ってしまっては、私も心苦しいからな」

そう言って龍娘は、莉々の全身いたる所に鍼を打つ。

鍼といっても痛みは感じない。

寧ろ痺れるような、心地良い感覚を覚えた。