初恋バッテリー

家に帰ってとりあえず、部屋に入る。
「あと1つで甲子園かぁ。」
やってきた甲斐があったな。
ゴールデンウイークの合宿もあったしね。
あの時は1年生ほとんど死んでたな。
それ以上にきつい冬合宿を含めた冬のトレーニング。
結構、記録取るのも頭使うんだよね。
私は今年も記録員としてベンチに入る。
ベンチはスタンドとは違う空気感を味わうことができる。
たったひと枠の記録員。
でもそんな記録員を任されている訳だから責任もある。
今年も絶対甲子園いく!
そして目指すは全国制覇!!
先輩たちと戦えるのはこの大会が最後。
そんな大会を最高のものにしたい。
それが私達の思い。
「ていうか、宿題おわるかなー。」
現在、夏休みまっただ中。
甲子園に行けば終わるかなんて分からない。
「今のうちやっとかないと」
机に座って宿題を広げる。
去年も思ったけどこの量ほんとに終わるかな?
やってみなきゃ、わかんないか。
今は6:25。
さくっと終わらせて明日の試合にのぞむか!
「おじゃましまーす。」
え?
私の部屋に入ってきたのは命。
「なんで!?」
「やっぱりー、足じゃん」
左膝のテーピングを見るなり命は言う。
「ていうか、もう病院行ったんだね」
「これで我慢して甲子園行けないとか、いやだから。」
命は黄色とオレンジのカーペットに腰を落とす。
「楽らしいな」
なんだか、命に褒められた気がして嬉しかった。
私が振り返って命の目を見ると真っ直ぐな目で見つめ返された。
こう見るとやっぱり命って美形顔だな。
絶対、命のこと好きな人たくさんいるんじゃないかな。
もちろん、縁も例外ではないはず。
「なんで、来たの?」
私が聞くと一度目をそらして答えてくれた。
「・・・また入院とかして元気なくされたら困るし」
「心配してくれたんだ。ありがとう。」
命はまた目をそらしてテレたように言った。
「大切だからな。楽は。」
よかった。
まだ命と幼馴染でいれる気がしてまた嬉しくなった。
「私も命は大切だよ!」
「ずるいっつの」
命の声は小さくて聞こえなかった。
「あん時みたいに暗い楽なんか見たくねぇ。
俺が野球部にいる理由って知ってる?」
今度は命からの質問だった。
考えてみたけどやっぱり全然分からなかった。
命の考えていることはいつでも分からないな。
「楽が元気でいるところ見たいから。」
「は?」
「嘘、野球が好きだからに決まってんじゃん」
なんだ、やっぱり命は変わらないな。
「頑張れ!命!甲子園まであと1つだよ!」
「そんなの、分かってる。ぜってー、頂点までのぼってみせる!」
決意か。
命の目標は2つ完全試合と甲子園優勝。
この2つとも達成できたらいいな。
「じゃあ、そろそろ帰るね」
「これから素振りとか、しなくていいからね!休養も大切なんだから!」
「はーい!」
そう言うと、命は部屋を出ていった。
ガチャリ。
ん?扉が開く音。
「楽も、無理すんな!」
そう言うと階段を駆け下りて玄関を出た。
「命ってこんなに優しかったっけ?」