初恋バッテリー

縁、どこにいるんだろう。
縁のいそうな場所・・・。
「二ノ宮!どこ行くんだよ!」
先輩の声だ。
「室内練習場。」
なんで!?なんで室内練習場!?
まぁ、一人で練習するならいいだろうけど。
私も室内練習場に向かわなきゃ。
伝言も頼まれてるし。
「縁。」
「なんだよ。」
縁の口調は強くてやっぱりまだいイライラしてるんだ。
「怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
いや、怒ってるじゃん。
「命が気に食わなかったんでしょ?」
私が言うと縁は目をそらした。
図星だ。わっかりやすっ!
縁はバットを持って素振りを始めた。
「なんで、あんなサイン出したんだ。」
「さっきの話全部聞いてたよ。」
「はぁ?」
素振りを止めて私を見る。
目は見開いていて本当に私に気づいていなかったんだあの時。
存在感ないな、私。
「首ふる勇気もないくせに、偉そうに言い過ぎ。」
「だって、首ふるなって命に言われて。」
「それは命が縁に宣言したんだよ。」
「なにの?」
やっぱり気づいてなかったんだ。
分かりにくい表現をする、命。
鈍感な、縁。
この二人は基本、野球で会話する。
だから、伝わりづらいこともたくさんあるんだ。
「『もう、縁に首ふらせるようなリードはしない』って」
「・・・」
「それに、ホームラン打たれたあとも、
インコースに構え続けたのは縁を信じてたから。
そんなのも分かんないの?」
縁はバカだ。
すぐに自分の感情に振り回される。
でも、そんな縁のことを一番わかってるのは命。
一番信頼しているのも命。
「でも、完全試合、無理って言われた。俺らの目標、ぶっ壊した。」
「それは命からのビタミン剤。」
「ビタミン剤?」
「縁に『じゃあそのままでいいの?』って言ってるんだよ。」
だいたい、二人が喧嘩するのは野球のことばっかり。
バッテリー間でのトラブル。
でも、そんな二人はバッテリー組んでもう9年目。
それなのに二人で心が一つなんてことはない。
完璧なバッテリーなんてない。
二人を見ててよく思う。
「ったく、分かりにくいんだよ。命は!」
「命がインコースに構え続けた理由。
イップスにならないようにって言ってた。
でもそれは後付の理由。本当の理由は・・・」
「俺のこと、信じてくれてたから。」
正解。
心を合わせてバッテリー。
いまの大和星城バッテリーは命と縁だけなんだよ。
「インコース嫌だって思ってても首振らなかった。
それは縁もまた命のことを信じているから。違う?」
「あーくそ、楽にはかなわねぇ。」
縁はバットをおいて室内練習場を出る。
「縁!」
私が名前を呼ぶと縁は足を止める。
「3色バッティング、今から」
「了解」
縁はレギュラー陣が待っているグラウンドへ向かう。
もちろんそこには命もいる。