初恋バッテリー

この盛り上がった流れの中、大和ナインは守備につく。
「選手の交代をお知らせします。」
ここでベンチが動く。
ライトの守備についていた縁が再びマウンドに上がる。
先頭バッターへの第1球はアウトコースへのストレート。
「ストライク!」
球審の声が響き渡る。球速は149キロ。
ここで自己最速をマークした。
命がミットを構えると口パクで縁にこう言った。
「笑え!」
それが縁に伝わったのか、縁の口角があがる。
2球目はアウトコースにスクリューボール。
これはバッターが空振りをし、2ストライク。
命は3球目もアウトコースにミットを構える。
サインは同じくスクリュー。
打者から逃げるようにまがるスクリューはこの打者には最適だ。
「ストライク!バッターアウト!」
このボールも空振りし、3球3振。
打者を三振にとった瞬間、縁がニヤッとする。
やはり、ピッチャーにとっての快感は三振らしい。
次のバッターはストレートを打たれ、1アウトランナー1塁。
伝令で私の言葉を内野陣に伝えてもらう。
内容は『走ってくる』つまり、盗塁してくる。
私の予感があたり縁が投じた1球目で走ってきた。
命が立ちながらボールを取り、セカンドへと投げる。
「アウト!」
命の送球でランナーを刺した。2アウトランナーなし。
このバッターを抑えれば試合が終わる。
1球目は惜しくもボール。
2球目は空振りし、1ボール1ストライク。
3球目は低めのボールを見極められ、2ボール1ストライク。
4球目はカーブをファウル。2ボール2ストライク。
5球目はインコースにはずれボール。3ボール2ストライク。
6球目、命が構えたのはインコースにストレート。
バッターはこのボールをとらえた。
打ったボールは勢いよくピッチャーの縁のもとへ。
パシッ。
体はよけながらも飛んできたボールは離さなかった。
ピッチャーライナー、3アウト、試合終了。
この試合は大和星城 8-7 凰清で大和星城が勝利した。
次は県予選、決勝。
勝った方が甲子園への切符を手に入れることができるのだ。