「もうすぐ、甲子園予選がはじまる。
レギュラーについては来週の月曜に発表を行う」
野球部のみんなは監督の話を聞く。
熱い夏のはじまりだ。
その一員になるために野球部員は努力する。
私はそんな二人に惹かれてマネージャーを勤めている。
制服のブラウスの下には野球部と同じ黒いアンダーシャツ。
スカートの下にはヒザ下のスパッツ。
黒髪ショートカットで前髪は眉にかかるくらいだからピンで止めている。
「楽!」
「一緒に帰ろうぜ!」
「どうせ、家隣だろ?」
この二人は同じ野球部の二人。私と同じ2年生。
二人共坊主だが、やはり違いがあってわかりやすい。
投手の二ノ宮縁はくっきり二重。
瞳が大きく、見つめられるとその瞳に吸い込まれそうになる。
アンダーシャツはいつも7部丈。
腕にはくっきり日焼けの後がある。
捕手の名波命は奥二重で右目の涙ボクロが特徴。
堀が深くて、一度見ると目が離せない。
アンダーシャツは長袖かタンクトップの2択だが必ず首まである。
この二人、世間でいう『イケメン』の部類に入る。
というか、とにかくモテる。
まぁ、縁も命もいいやつだと思うけどね。
そんなことをも思っている私は市丸楽。
『楽』って珍しい名前だけど自分的に気に入ってる。
「ちょっと待ってー!ノート届けにいかなきゃ」
野球部には部活ノートがある。
このノートには監督への不満や試合の反省を書くノート。
2,3年生は必ず練習終わりに提出している。
で、持っていく係りが私なのだ。
監督は練習に来るのはとても早い。
でも、片付けせずに監督からの諸連絡に移る。
だから片付けしている分の時間に私が集めてまわるのだ。
ノートは必ず二冊持ち代わりばんこに提出している。
ノートは職員室の監督の机にいつも置いてもらっている。
「失礼しました。」
職員室を出ると縁と命が待っている。
「今日は居残りいいの?」
「家に帰ってどうせ素振りするし、わざわざ学校でしなくても。」
命が笑いながら言う。
それに対して縁も続ける。
「投球練習も家でやろうと思えばできるしな!」
私達は家が近所でいわゆる『幼なじみ』というやつだ。