「...これはもう、奪い取れないね」
奏弥が、少し悲しそうな低い声で
そう呟いた
「...なによ
そんなのあんただって同じでしょ」
胡桃も 対抗するように言った
「うん、まーね」
「悔しくないの?」
「悔しいよ?
俺だって悠月ちゃんのこと好きだし
でも、悠月ちゃんが幸せでいてくれるなら
俺は充分」
「そんなの自分が辛い思いするだけじゃ…」
「いいんだよ
辛い思いするのは俺だけで。
俺が辛いことから逃げてたら
悠月ちゃんが辛い思いするだけだから」
「...優しい所あるのね」
「あはは...まぁ」
こいつは、自分よりも
大切な人を大事にしてて
良いこと言ってるけど
正直泣きそうな目をしてて
まだ諦められてないんだと思う
でも、悠月ちゃんの幸せのために
自分を犠牲にできる植田は
根からのいい奴なんだと思う
うちも、見習わなきゃね
植田のこと、見直しちゃった