実「それで???」


柚「意地悪してやった。」


実「はあ??」



あの後。

ずっと一緒にいたい人ナンバーワンの翔
なのに好き、とかいう感覚で
考えったことなかったけれど、

ゆすが好き。ゆずが大切。

どれだけ嬉しかったか。

それだから、いつも意地悪なアイツに
意地悪してやったんだ。

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翔の言葉から数秒の沈黙。


柚「ん〜〜〜、翔ちゃん。
そーんなに私の事好きだったんだぁ〜。」



ベッドに座ってる私と
そのすぐ目の前で床に座って
私の顔をのぞき込んでる翔。



翔「え!?は!?何!?
人が告白してるのにからかうの!?
は!?」


柚「やだ。」


翔「は?」


柚「やーだ。」


翔「何が?」


柚「こーくーはーくー。」


翔「はっ!?」



え!?とか、は!?とかしか言ってない翔に
今一番のニヤニヤ顔で言う。



柚「あーあー。
取材でその、大切な人、
に振られましたって言わないと〜!」



それを言うと翔の目がキラリと光って
少し睨まれる。



翔「嘘つき。嘘つくゆずやだ~。
何?ゆずは俺が嫌いなのか~
そうかそうか~。
じゃあもうここには来ないねぇ~
そしてもう電話もできないし
おしゃべりもできないなぁ〜
さーみしーいな~。」



翔がSモードに入った。
口角が完全に上がってる…

うわ、気づかれた…



翔「そんなにいい笑顔で断られても
納得できませーん。」


柚「えっ!笑顔!?なーんだー。
少しはこっちも焦らせてやろうと
思ったのに〜!」


と言うと少し黙って翔は、
小さい声で言った。


翔「めっちゃ焦ったわ、ばか。」


柚「へ?」



翔の顔が赤くなってくのが分かった。



翔「まーずー、
柚羽が陽大とめっちゃ
話してるんだもん。
そしてここまで走って
帰ってきたらまさかのここにも陽大いるし。
どうしようかと思ったわまじ。
そんなに陽大と仲良いとか
思ってなかったし。」


柚「え。志田くん??
ほとんど今日が喋るの初めて初めてと
言っていいくらいなんだけど…!」



翔の嫉妬ぐせは分かってたけど、
ここまで見てたとは。

練習中はこっちなんて
気にしてないと思ってた。



翔「え、そうなの?」


柚「うん。」


翔「なーーーーんだよ。
俺の心配無駄すぎるじゃんか!」


柚「うん。」


翔「うん、じゃないよもう!
さっきから!!!」


柚「ごめんって!
いや、なんか、翔でもそこまで
ねちねち嫉妬して表に出すんだなあって。」



元カレの時も、嫉妬というか独占欲だけは
見え見えだったけど、
私に、『別れて』とか
言うわけでもなかった。

だからこんなにひとりで
いじけてたのがなんだか可愛くて、
やっぱ私はこの人がいなきゃダメなんだな
って感じさせて。



翔「俺がどんだけ心配してきたと思ってんの。
柚に、告白されて付き合うことになった
って報告される度に
俺どんだけ辛かったと思ってんの。」


柚「私ね、翔はいつまでも私と
一緒にいてくれると思ってたの。
あ、なんかそういうあれじゃなくて、
普通にね、兄妹みたいな。
だからかなんか変な安心感も
あったんだろうなー。
翔を、恋愛対象、として
見たことなかったの。
それなのにテレビで翔のあんな姿見て、
翔が私から離れていくって思ったら、
なんかわかんなくなっちゃって。
翔が遠征中、
私どうしていいかほんとに
わからなかったんだよね。
いつも掛かってくる電話も
来なかったしね!!!」


翔「ああああああーー!!!!
それはごめんまじでごめんほんとごめん!
今回練習特別辛いし一日中だし
部屋戻ったらすぐ寝ちゃって
時差考えてたら電話できなくて…」



私の足元で焦って頭下げてる翔に
笑顔が込み上げてくる。

確かに翔は遠征中の電話は、
だいたい私が学校終わって家にいる時に
掛かってきて話した後に遠征先の時間見ると
深夜3時とかだったりもする。



柚「あははは!!いいのいいのそれは笑
翔忙しいのわかってたし!
いつも遠征中電話くれる時間、
向こうの時間だと深夜だったりして
心配してたし。
もっと遠征にも集中して欲しかったしね。
そっちの方がいいって!」


翔「いや、俺も時差ボケで
寝れなかったりしたから
全然俺のことは気にしないでいいんだよ!?
今回は特別だし…」


柚「言い訳いいから。
大変なのは翔の方でしょ。
自分の体大事にしてくれなきゃ困る。」


翔「もうわかった、その話は後にしよ。
告白の、ちゃんとした返事きかせて。」


柚「えっ、あ、」



急に答えを迫られた。
ちょっとその話から逃げてたのに…



柚「あれだよ。
私、翔のこと好き、
とか自覚したことないよ?」


翔「それはさっきも聞いた。
でも柚は俺と離れるの嫌でしょ?」


柚「うん。それはすごい嫌。
ずっと一緒にいたい。」



そう言ったら翔が赤くなってく顔を隠すから、
なんか私とんでもない事言ってしまった、
と焦った。
と同時に私まで顔が熱くなる。



翔「それね、めっちゃ嬉しい。」



やっと顔を上げた翔が私を見上げながら言う。
なにこれ、すごく恥ずかしい。



翔「絶対、俺のこと好きって
自覚させてやるから。」