ザーッ…
ピーッ…

結局当たり前のように
プールまでやって来た。

プールの中をガラス越しで見える個室に
4人で入る。

翔ももちろん泳いでる。

そして千歳選手もいる。



実「わー、すっごいねー!
有名水泳選手の彼女の友達でよかった…!」


柚「だから実佳、彼女じゃないって…」



翔がこっちに気づいて軽く手を振ってきた。

私以外、3人は手を振り返す。

翔は多分私の顔を見て
微妙な顔してまたプールに入って行く。


何よアイツ…



実「それにしても大きな大きなプールだこと!
さすが国立の建物!」


陽「なにそれ、なんか貧乏くさい」


実「うるっさいな!もう陽大ほんと黙って。
そんなことよりちょっと外も
見学してこようかなー」


悟「あ、じゃ、じゃあ俺も一緒に
行こうかな…!」


実「ほんと?じゃあ行こう行こう〜!」



どうやらこちら様は頑張ってるらしい。



実「あっ、柚羽はここで彼氏でも
拝んでなさいっ!
陽大はうるさいけど、
来ても来なくてもいいよ?」


陽「それは遠まわしに来るな
って言ってるだろ?
いーよ、別にここで見てたいしー。」


実「おーそうかそうか。
じゃあ行ってきますねー」



楽しげな実佳と
足と手が一緒に動いてる悟流が
出ていって静かになった。


ってことにもあんまり気づかないくらい、
私はプールの方に見とれてた。

実際、私はあんまり水泳なんてわからない。

翔が勝手に教えてくれることもあるけど
聞き流すことの方が多いし。

でも、それでも、アイツはすごい
っていうのがわかる。

向こう側で潜った、って思って見てたら
気づいた時にはもうこっち側に着いている。



陽「いやあ、やっぱり翔太すごいなあ…
世界の松木翔太になってるなあ…」


柚「あれ、志田くん
外行ってなかったんだ!!」


唐突に志田くんがしゃべり出す。


陽「え、俺ってそんな影薄いわけ?」


柚「ち、違う違う!ごめんごめん!
そんなに薄くないって!
……あ、メガネとってる時は。笑」


陽「えっ、ひどいな!
やっぱ学校では影薄いキャラか…
もういっそ1日コンタクトにしようかな…」


柚「そうしなそうしな!笑」


陽「そこまでかよ!!」



志田くんって結構喋りやすい人
だったみたい。

学校ではほんとメガネで天才で
近寄りがたいから
なんとも言えなかったけど…

翔太って呼んでたし…?
あれ?翔太!?!?



柚「えっ、あれっ、
さっき翔太って言ってたよね?
何なに、悟流繋がりでもしかして
翔とも仲良くなったの!?」


陽「あら、ご名答。その通り〜。
というか結構前から仲良かったんだよ、
悟流とも翔太とも。実は。」


柚「へー、なんか意外…。
実佳から地味っ子、地味っ子、
としか聞いてなかったから…」


陽「あいつもかなりひどいこと言うよな!!
俺に対しての当たり強すぎだしな!!」



とりあえずふたりが
仲のいい幼馴染みなのは、わかった。


実「ただいま〜〜」


柚「あ、おかえり〜」


それからもプールを気にしつつ、
志田くんとお話してたら
実佳達が帰ってきた。



実「あら、仲良さげにやってたんだ!
そういえば柚羽と陽大って
あんまりない組み合わせだから
平気かなーって
早めに帰って来たんだよ〜」


悟「その必要もあんまなかったぽいけどな!」


ねー、とか言って仲良さげにしてるふたり。

悟流、少しは頑張ったんじゃん。



陽「あっ、練習終わりみたい。」



こっちの方にガラス越しで
笑顔で駆け寄ってくる翔。

なんだか色々考えたけど
やっぱり翔を信じようって思って
笑いかけると翔は一層笑顔になって
駆けてくる。


と、


「「「「えっ」」」」


咄嗟に出た、私達四人の声。

それと同時に固まる翔の顔。

そして私は耐えきれなくなって
この部屋から飛び出した。