実「何、終始無言とかやめてね。」



部活後、実佳が連れて行ってくれたのは、
いつものファミレスじゃなくて、
私の大好きなクレープの店。



柚「はーい。」


実「まさか柚羽、教室でも
ずっとそんなんだったの?」


柚「わかんないなー。」



いや、多分そうだった。
実佳はクラスが違うので
学校内ではあんまり会わない。



実「なんでよ、
部活終わるまでは普通だったのに!」


柚「いや、それは
みんなに迷惑かけたくないし。」


実「そんなに落ち込んで、
まだ松木くんが好きだ、
って認めないわけ?」


柚「もうわからないんだもん。
わかんないからわかんない。」


実「なにそれ。
柚羽が訳わかんないけど!?」



なにがしたいのか、わからない。


翔の熱愛報道。

これを私がみてどう思うか?

だって幼馴染みだよ!

私に毎日のようににべたべたしてくる人が
他の人にべたべたされてるとか不明でしょ。



実「柚羽、表情コロコロ変わりすぎ。
さ、とりあえず忘れな!食べな!」


柚「え、ムリ。
なんかこんがらがってて
真実がわからなくなってきた。」


実「……わかった。
今から言うからそれ信じて。
そして食べてね。
松木くんは、柚羽のことが好きなの。
千歳選手はただ、くっついてるだけで
松木くんは正直それを嫌がってるの!
はい、以上!食え!
せっかく私の奢りなんだから!」



そのあとクレープは普通に食べた。

でも、翔のことは頭から離れなかった。



いきなり、松木くんは柚羽が好きなの!
とか言われてもなあ…

いや、自覚はしてるよ?

だって彼氏がいたときには
別れさせようとするし、
自分がどんなに有名か知ってて
べたべたしてくるしさ。

でも自惚れてるだけだったら
恥ずかしいじゃん。

自分の中での翔の存在が大きいから、
好きな人にはしにくい。

今までの日常通りにいかなくなると
嫌だ。

だから、好きなんだ、
って自覚してないだけかもしれない。

したくないだけかもしれない。