「んで、んで、
そのあとどうなったの?
イケメン幼馴染みスイマーとは!?」


「なんもないって。
からかわれて、
そのまま今日ドイツへ行きました。」


「うっそー。それはない。
松木くん、なんでそんな奥手なのよ。
さっさと柚羽をゲットしちゃえばいいのに!」



……。

翔がうちに来てから3日後。

高校で仲良くなった、
同じ部活の中沢実佳と
行きつけのファミレスで話している。
というかもう弾丸トーク。



柚「翔がどう思ってるかは
分かんないけど、
恋愛的に好きかって
わからないんだよね、私は。
翔にべたべたされるの嫌じゃないし、
ドキドキもするけどさ。」



とか言ってるけど、
前に付き合ってた人だって
自分から告白して付き合ったわけでもないから、
私もしかしたら恋を知らないのかもなぁ。

そんな私が翔のこと言っちゃダメか、、



実「なにそれ、もったいなーい!!
よくあるじゃん、小説で!!
幼馴染みだと思ってたのにいつの間にか…
的な!!」


柚「あのさ、小説じゃないの!!
しかもあんな世間を騒がせる人気者だよ?
私には負えない……」


実「それもそうね…
でも、松木くんは
絶対柚羽のこと好きじゃん。
もったいないなぁ…」



彼氏がいたことが何度かある。

もちろん翔じゃなくて。

そのとき、翔は遠征の時以外
毎日と言って良いほどうちへ来た。

そしていつものSっ気と甘えん坊が
何倍にもなり、ふりかかってくる。

彼氏に申し訳なく思い、
いつも私の方から別れを切り出す。

気にしない、とか言ってくれるが、
これは誰から見ても浮気行為。

結局あんまし続かない。

翔がわざとやっているのだと最近気づき、
夏あたりから彼氏は作らないよう
心掛けている。



柚「翔にはこのままでいてほしいんだよねー。
第一付き合ったとしても、
私が好きになれるかわかんないし。」


実「いいねー、そんなかっこよくて有名人で。
最高の幼馴染み。
私の幼馴染みなんてくそなメガネだし。
あんなのと恋愛とか考えられない……」


柚「志田くんも、いろいろ可愛そう、
それ。」



美佳の幼馴染みは、
私と同じクラスの志田陽大くん。

メガネかけてていかにも天才くん。



実「陽大はどーでもいいの!
まあ、柚羽、
いつか松木くんに襲われるね。」


柚「…………は?
え、美佳何言ってるの…?」


実「だって健全な男子高校生よ。
好きな女の子とふたりっきりで
部屋にこもるとか、
襲われるシチュエーションでしょ!!」



美佳はどうやら
恋愛小説が大好きなんだと思う。

シチュエーションがどう、
とか多い。



実「でもねー。
松木くん柚羽のこと
大切にしてそうだからなー。
そう簡単に襲いはしないかなー。」


柚「いや、あたりまえでしょ!」


実「え、松木くんがあんたを大切にしてる
ってことが?」


柚「ちーがーいーまーす!
襲わないってこと!!」



ずいぶんと大きな声で言ってたしまった。

周りの席にひと少なくて良かった…

声のトーンを低くしてもう一度喋る。



柚「コホン、襲われるとかないから。
そういうシチュエーションもないし
小説でもないからね!」


実「はーいはい。分かってるって!
でもあんた、付き合わないつもりなら、
ずっと松木くんが
あんたのそばにいるとは
限らないんだからね。」