和が香織のことで嬉しそうに笑えば笑うほど、私は泣きそうだ。
正直、見ていられない。
「じゃあ今日の放課後、教室で待っててね」
「お、おう……っ!」
とにかくどこかへ逃げたくて、私は慌てるかのように反対方向へと足を向ける。
早く、早く。
一刻も早く、和から離れないと。
締め付けられる胸を抑えて、ただひたすらに「大丈夫」と自分に言い聞かせた。
「あっ、澪!」
それなのに、和は私の足を止める。その声で名前を呼ばれたら、無視なんてできない。
あぁ、もう、やめてよ。
「本当にありがとなっ!」
そんな顔で、私を見ないで。
声を出せば震えてるのがバレそうで、私はただただ手を振る。
そして、今度こそ逃げるかのようにその場を後にした。
あと少し。あと少しで、私の役目は終わるんだ。
今日から、私と和の時間はない。



