「……戻るか」

「うん」



黒川くんの言葉で、どちらからともなくゆっくりと手を離す。


少し寂しい気もしたけど、さっきよりもだいぶ落ち着いてる自分に驚いた。



教室の近くまで差し掛かったとき、黒川くんは私の目を見た。



「俺荷物取って来るから、教室で待ってろ。送る」

「え?」


何を言われるかと思えば、まさかの発言。



「い、いいよ。悪いし……っ」

「いいから」



ずっと助けられてばかりだから、さすがに送ってもらうのは申し訳ない。


そう思って断ろうとしたのに、黒川くんはそれだけを言ってスタスタと自分の教室に行ってしまった。