「おはよう、香織ちゃん」

「えっ?あ、澪南ちゃん。おはよう」



教室に入って、私は真っ先に香織ちゃんに声をかけた。



席が前後だから普通に喋るけど、よく考えたらわざわざ朝の挨拶なんてしてなかった気がする。


突然のことだったから、香織ちゃんもちょっとびっくりしてるし。



これが、和のための私の作戦。


まずは私が香織ちゃんと仲良くなること。



席が前後ってだけで特別仲が良いわけじゃないから、仲良くならないと協力のしようがないし。


出そうになったため息を、グッと抑える。



こんなことを考えてる自分がつくづく嫌だ。


そうは思いながらも、私はもう一度笑顔で彼女に話しかけた。




「香織ちゃん、今日の数学の宿題できた?私分かんないとこあってさー……」

「あ、それならあたしできたよ」

「え、本当?教えて!」




モヤモヤとする気持ちを抑えて、念じをかける。


これは、和のため。これは和のためだ、と。



和の喜ぶ顔が見たいから頑張るんだ。




全ては私の好きな人……いや、私の1番の、親友のために。