リリアーナが部屋へと戻り、ドレスから着替え、ソファーでうとうとし始めていた頃だった。

誰かがノックなしで部屋に入ってくる音がして、リリアーナは慌てて目を覚ます。

「俺だよ。」

「…なんだ、デリックね…。」

「何だってなんだよ。そんな事より、ちょっとついてきて欲しい所がある。」

何のことか分からないリリアーナだが、その場所に歩みを進めようとしているデリックを追いかけた。

しばらくついて行くと、先ほどまで舞踏会をしていたホールの隣の応接間の前に来ていた。

デリックは誰もいないことを確認し、重厚感のあるドアを開けた。

上半分は深緑の壁紙、下半分にはツヤのある焦げ茶色の板材が張り巡らされているという、古い屋敷によく見られる典型的な腰壁だ。

床は、壁の下半分と同じ材木でできたフローリングに、絨毯が敷かれてある。

リリアーナはその部屋をぼんやりと眺めていると、デリックは壁の一部の木の板を外した。

「ちょっ、何して…」

リリアーナは驚いたが、そこには地下に通じる階段が出現していた。

「すごい!隠し階段があるなんてワクワクする!」

リリアーナがはしゃいでいると、デリックはランプを持って階段を降り始めた。

二人は階段を全て降りると明るく開けた場所があり、そこにはたくさんの鉄格子があった。
と言っても、その鉄格子の中は割と快適そうに見えたのだが。

するとリリアーナは、二人から見て一番手前の牢屋に誰かが入っているのに気が付いた。

牢屋の中を暗くして、ベッドで眠っているようだ。

「…もしかして…」

「あぁ。お前を助けに来たところ、この屋敷の人間に捕まったらしい。
この牢屋の中は魔法が使えないようになっている。
そのため魔力の強い俺は、魔法が使えないように牢屋の管理を任されている。
報酬はきっちり貰ってるから出してやることはできなかったんだがな。」

そう言いながらデリックは鍵を開け、リリアーナを中へ入れてやった。

リリアーナは中へ入るとすぐに、ベッドですやすやと眠っている人物に駆け寄った。