「アドルフったら、そんなに改まらなくてもいいのに。」

リリアーナはそう言うが、アドルフは儀礼的に手を差し伸べる。
どうやら踊って欲しいということらしい。

リリアーナが手を乗せると、アドルフは思いがけず強い力で引っ張った。

「ちょっ、アドルフ?」

リリアーナはアドルフに引っ張られ、会場の中心へと投げ出された。

二人は音楽に合わせて踊り出した。


「ハンナ様、あの頃の事覚えていますか?」

リリアーナはその言葉に、城に住んでいた頃のたくさんの記憶が蘇ってきた。

アドルフと城の中でかくれんぼをしたこと、宝探しをしたこと、隠し通路を探したこと…。


「懐かしいわ…アドルフも全然変わってないんだもの。」

「いえ、ハンナ様の方が変わっていませんよ。しかもそのドレス、ハンナ様がよく舞踏会で着ていたものと似ていますね。お母様に譲ってもらったと言って見せに来ていたのを思い出します。」

リリアーナは笑って頷く。

「もう二度と会えないと思っていました。」

アドルフは真剣な目でそう言った。

リリアーナは、グレーなのかブルーなのかよく分からないその瞳に見入ってしまい、アドルフの足を踏んでしまった。

「あ、ごめんなさい!」

リリアーナが慌てて謝ると、アドルフはまた笑いながら言う。

「昔っから、踊りながら話をすると足を踏みましたね。」

リリアーナは顔を赤くした。