リリアーナはとりあえず外に出ようと考え、窓ガラスに思い切り椅子をぶつけてみたがビクともしない。


それもそのはず、魔法の国にある窓ガラスは、普通に叩かれても破れないような魔法がかかっているのだ。

長い人間界での生活の中で、リリアーナはすっかりその事を忘れていた。


しかし今、記憶を取り戻したリリアーナは魔法を使うことができる。

リリアーナは今まで習った魔法の中で何か使える物がないか考えていると、ある事を思い出した。


それは、この街で最初にバスに乗った時と、リリアーナが連れ去られた時に使われていた魔法で、自分の居場所を相手に教えることのできる魔法である。

だが居場所をはっきりと伝える事が出来ても、自分の所まで来てもらえるかは別問題である。


「…でも、やってみる価値はあるわ。」


リリアーナは、そう言って呪文を唱え、ジャックの顔を思い浮かべた。

ジャックは信用できないが、他にリリアーナの知り合いはいない。

たとえここにいる組織と同じようなものでも、ここにいるよりはずっとマシである。


ここから出られなければ明後日には殺されてしまう。


リリアーナにはもう時間がなかった。