Time Paradox

「ロイドはこんなに素晴らしい演奏をしてくれているのに、なぜ誰も喜ばないんだ？」

ある日、１０歳のフォルスは無邪気な表情で言った。

「…この屋敷では魔法以外のものに意味なんてないんだよ。フォルスみたいな才能が僕にはない。魔法が使えない僕のような人間はこの屋敷に居場所なんてないし、成人したら出て行くつもりだよ。」

「なんで…成人までまだ６年もあるんだぞ！？それまでに父さん母さんから認めて貰えるように…」

「フォルスには分かんないんだよ‼︎こんな落ちこぼれの気持ちなんて…！」

ロイドはフォルスの言葉を遮り、つい感情的な言葉をぶつけてしまった。

魔法は努力でどうにかなるものではないことも、ロイドは嫌というほどフォルスに見せつけられていた。

この屋敷でピアノの演奏ができた所で何の役にも立たない。

ロイドは鍵盤の蓋を下ろし、立ち尽くすフォルスの方も見ずに部屋を後にした。