Time Paradox

1番古い人生では双子として生まれた。

由緒正しい魔法使いの家柄であるケインズ家では、男の子の双子はそれはそれは喜ばれた。

フォルスという名の活発な男の子と、ロイドという名の静かな男の子だった。

そして後にフォルスは繰り返される転生でリリアーナに、ロイドはアドルフへと魂を受け継ぐことになる。

フォルスは幼少の頃から魔法の発達も早く、両親や魔法を教える教師までもが彼に付きっきりであった。

周囲の熱心な教育もあり、フォルスはどんどん才能を伸ばしていった。

そして16歳で成人を迎える頃には、国内でも有名な魔法使いと肩を並べるほどの実力をつけていた。

一方でロイドはというと、才能あるフォルスの陰で努力を重ねてはいたものの、なかなか成長が見えずに周囲に見放されてしまっていた。

双子だからと言って比べられるどころか、ロイドは完全にいないものとして扱われてしまっていたのだ。

だが、ロイドには一つだけ得意だと思うことがあった。

それは音楽である。

ケインズ家は魔法使いの家系で音楽などで評価される事はなかったのだが、それでも幼いロイドは唯一認めて貰える望みのあるピアノにしがみついた。

魔法を極める事を諦めたようなロイドの様子に使用人や両親までもが眉を顰めたが、それでもロイドは認められる事を諦めなかった。

だが、フォルスだけは彼のピアノの才能を認め、唯一の理解者になろうとした。