「そういえば…ジャック、さっきまでどこに行ってたんだ?」

ジャックはデリックの問いに一瞬硬直した。

「…いや、その…」

ジャックが言葉を詰まらせると、デリックは察したのか、ニヤニヤしはじめた。

「何かいい事あったような雰囲気だもんな!」

「どういうことなの、デリック?」

イザベラはわけが分からず二人を交互に見るが、ルーカスは手を叩き、ひらめいたようだ。

「リリアーナ様か!」

「ちょっ…」

「あら!ジャック様、おめでとう!嬉しいわね〜」

「いやぁ、ついに…」

「感慨深いですねぇ!」

リリアーナの名前を出した瞬間、そこにいたニコラス以外の人間は納得した。

だが、またホールの扉が開かれた。

長身の男が、真っ赤なドレスを纏った美しい女をエスコートしている。

「あ、兄さんがきた!ルクレツィアさんと何してたんだろう?」

ニコラスは何となくニヤニヤしているが、ジャックとデリックはピリピリとした空気を出した。

二人もまた、こちらに駆け寄ってきた。

「ジャック…どこへ行ってたの?」

「いや、ルクレツィアさんこそ…」

「あぁ!イザベラ様だったのね!」

ジャックの話も遮り、ルクレツィアは驚いてイザベラを見ると、彼女は少し照れくさそうにしていた。

「こっちの方がいいって…ニコラスさんが…」

「俺が選んだんだ!メイクも変えてみた!」

「こっちの方が好きだわ。なんだかすごく…羨ましい。魅力的…」

ルクレツィアは彼女に羨望の眼差しを向けた。

「いやいや、ルクレツィア様の方が魅力的だわ!」

だがルクレツィアは首を振り、とろんとした目で彼女の髪を撫でた。

「あの…緊張するわ…」

イザベラが目を逸らして言うと、ルクレツィアははっとして手を離した。

「あら…ごめんなさい!私、どうかしてたわね!」

ルクレツィアはそう言うと、逃げるようにドリンクを取りに行った。

「…あの人、イザベラのこと狙ってた?」

ニコラスが横から口を開くと、ルーカスも疑問を唱える。

「もしかしたら…バイ…」

「えぇえ!そういう対象…」

それにはイザベラも驚いたが、何となく彼女の目はそんな気を起こさせるものだった。