その頃ジャックは何かを思い出したのか、リリアーナの部屋の扉をノックしていた。

だが、なぜか返事はない。

「リリアーナ、寝たのか?」

ジャックは諦めて引き返そうとした時、ふとドアが閉まりきっていない事に気が付いた。

「…リリアーナは鍵も掛けずに出かけるからなぁ。」

ジャックは軽く辺りを見回すと、取っ手に手を掛けて静かに扉を開けた。

電気を点けると、誰もいない片付いた部屋が露わになった。

恐る恐るベッドの布団をめくってみるが、中にリリアーナが丸まっていることもなかった。

「…何かあったのか?」

ジャックはもう一度部屋を見回すと、廊下に誰もいないのを確認してから部屋を出た。


ジャックは寝静まる二階の廊下を探し回ったが、やはり見つからないようだ。


「…もしかして…」

ジャックは、以前リリアーナとイザベラが一緒に呑む約束をしていたのを思い出した。

早速イザベラの部屋の扉を叩いた。

程なくしてイザベラの眠そうな返事が聞こえ、扉が開いた。

ド派手なネグリジェに身を包んだイザベラが顔を出すと、意外な人物の訪問に目を見開いた。

「こんな夜遅くに悪いんだけど、今リリアーナと一緒だったりしないよな?」

「リリアーナ様ならさっきお部屋に帰っ…リリアーナ様!ちゃんとお部屋に辿り着けたかしら⁉︎」

イザベラはジャックを押し退けると、慌てて廊下に飛び出して行った。


「…鍵はしめなくていいのかよ…」

ジャックはそう呟きながらイザベラの部屋の扉をしっかりと閉め、彼女の跡を追った。


イザベラは勢いよくリリアーナの部屋の扉を開けたが、彼女の姿はない。

「…リリアーナ様…!」

「…そう言えば今日のパーティー、何人くらいの客が来たんだ?」

ジャックが部屋のドアを開けながら尋ねると、イザベラの顔からは一気に血の気が引いていった。

「…もしかして…」

「…恐らく、その"もしかして"だ…」

振り向くと、ジャックも同じような顔をしていた。