パーティーが終わったあと、リリアーナはイザベラの部屋へ来ていた。


「リリアーナ様ぁ!夢が叶いましたっ!」

イザベラはそう言ってワインの入ったグラスを高く上げる。

「かんぱ〜い!」

「…か、かんぱ〜い…」

リリアーナもイザベラに続いて渋々乾杯をすると、早速飲み始めた。

だが、これまでを見ていただいてお分かりの通り、良くも悪くもリリアーナはすこぶる酒癖が悪いのだ。

このアーノルド家で酔った時はいい方に働いたが、酒場で大学生に絡んだ時は散々であった。


リリアーナが躊躇っていると、デイジーがチョコレートを運んできた。
恐らくつまみになるものだろう。

デイジーはやけにニコニコしながらチョコレートをテーブルに置くと、上ずった声で「失礼します」と言って部屋を出て行った。

「…デイジー、何かいい事をでもあったのかしら?」

リリアーナが呟くと、イザベラがチョコを勧めてきた。

「あ、ありがとう。いただきます。」

リリアーナは少し甘さ控えめのカリっとしたチョコを口に運ぶと、飲み込むためにワインを口に運んだ。


それからどうなったかは何となく想像がつくであろう。

案の定、リリアーナはほぼ一人でワインの瓶を空にした。


「イザベラぁ!あなたが悪いのよぉ?ウフフフフ!」

リリアーナはそう言ってイザベラの肩に手を回し、運ばれてきたワインを瓶ごとラッパ飲みし始めた。

「…り、リリアーナ様…」

この様子にはさすがのイザベラもかなり引いていた。

そして肩に手を回したまま、瓶を片手にふらふらと歩き出した。

「ちょっ…リリアーナ様っ!」

イザベラが止めようとするが、その手も振りほどいて扉を開ける。

「あ、いたいた…デイジーっ!」

リリアーナは一日の仕事が終わって部屋に戻ろうとしているデイジーに絡み、デイジーの部屋に入った。

「…り、リリアーナ様、大丈夫ですか?そんなに酔って…」

「…デイジー、私は知ってるのよ?」

パーティーでルーカスと一緒にいた事を話しているのかと思い、デイジーは目が泳いだ。

「その反応は…」

「…ち、違うんです!」

「何が違うのかしら?」

「私が一人で踊っていたら…その…」

「そっかぁ、いつも一人で踊ってるのね!それでそれで⁉︎」

リリアーナがワインを飲みながら続きを促すと、デイジーは何から何までぶちまけてしまった。



「なるほどぉ!ルーカスって意外にロマンチストなのねぇ…」

リリアーナはニヤニヤしながら言うと、デイジーは顔を赤くした。

「リリアーナ様っ!」

ドアが開く音とイザベラの声がして振り向くと、どうやらリリアーナの事を探しに来ていたようだ。

「ここにいたんですね!デイジーは疲れてるんですから、もう戻りますよ!」

「…しょうがないわねぇ。素敵なお話…ごちそうさまでしたぁ!」

リリアーナはデイジーにそう言うと、大人しくイザベラに引っ張られて部屋に戻って行った。