高校野球が開幕した。
「我々はスポーツ精神に則り……」
緊張で震えながらキャプテンの直樹が宣誓する。
張り詰めた心意気が伝わってくる。
美紀は手に汗握っていた。
大会歌《栄光は君に輝く》が始まる。
この後すぐ、開会式を終えたばかりの第一試合が秀樹と直樹の初舞台となる。
秀樹は大きな深呼吸をしてマウンドに向かった。
「兄貴ー! 大! みんな頑張れ!」
美紀の応援で俄然活気付くナイン。
ガッツポーズで応えた。
でも美紀は正樹を見つめていた。
これから大事な第一戦だと言うのに、美紀の頭の中は正樹でいっぱいだった。
(あー! 何遣っているんだろ私)
美紀は慌ててグランドを見つめた。
美紀は悩んでいた。
小さい頃から正樹が大好きだった。その気持ちは今でも変わらない。
でもどうして好きなのかが解らない。
ただ無性に甘えたくなる。
傍にいたくて仕方ない。
そして何時も言う。
「パパ大好き」
と――。
プロレスラーが好きと言う訳ではない。
どちらかと言うと嫌いだった。
珠希に連れられて、デパートの屋上に良く怪獣ショーを見に行った。
大喜びする兄達を横目に、珠希の後ろに隠れて泣いていた美紀。
プロレスラーの団体が来たこともあった。
その余りの大きさに号泣した。
でもパパは違っていた。
小さい時から馴れている訳ではない。
平成の小影虎とオーナーがリングネームを付けてくれたようにプロレスラーとしては小柄だった。
それでもパワーは人一倍だった。
その力を珠希が引き出してくれていたのだった。
優しい妻と可愛い子供達。
それが原動力だった。
正樹は優しかった。
だから美紀が大好きになったのだった。
秀樹と直樹には、兄弟と言う以外格別な感情は持っていなかった。
勿論同級生の大にも。
美紀にとって三人は親友であり、仲間だった。
共に成長するための。
何故この三人ではいけないのか?
答えなど出る筈がない。
祖父が書いた一言。
――美紀ちゃんの好きな人は誰?――
あれを見て正樹を思った。
祖父を見つめながら頭の中では正樹との結婚式を夢に見ていた。
周りで跪く三人組には目もくれないで正樹の元へ走っていたのだ。
それでもそれにより美紀は、本当に正樹を愛していることを確認した。
そしてやはりパパが好きだと実感する美紀だった。
「我々はスポーツ精神に則り……」
緊張で震えながらキャプテンの直樹が宣誓する。
張り詰めた心意気が伝わってくる。
美紀は手に汗握っていた。
大会歌《栄光は君に輝く》が始まる。
この後すぐ、開会式を終えたばかりの第一試合が秀樹と直樹の初舞台となる。
秀樹は大きな深呼吸をしてマウンドに向かった。
「兄貴ー! 大! みんな頑張れ!」
美紀の応援で俄然活気付くナイン。
ガッツポーズで応えた。
でも美紀は正樹を見つめていた。
これから大事な第一戦だと言うのに、美紀の頭の中は正樹でいっぱいだった。
(あー! 何遣っているんだろ私)
美紀は慌ててグランドを見つめた。
美紀は悩んでいた。
小さい頃から正樹が大好きだった。その気持ちは今でも変わらない。
でもどうして好きなのかが解らない。
ただ無性に甘えたくなる。
傍にいたくて仕方ない。
そして何時も言う。
「パパ大好き」
と――。
プロレスラーが好きと言う訳ではない。
どちらかと言うと嫌いだった。
珠希に連れられて、デパートの屋上に良く怪獣ショーを見に行った。
大喜びする兄達を横目に、珠希の後ろに隠れて泣いていた美紀。
プロレスラーの団体が来たこともあった。
その余りの大きさに号泣した。
でもパパは違っていた。
小さい時から馴れている訳ではない。
平成の小影虎とオーナーがリングネームを付けてくれたようにプロレスラーとしては小柄だった。
それでもパワーは人一倍だった。
その力を珠希が引き出してくれていたのだった。
優しい妻と可愛い子供達。
それが原動力だった。
正樹は優しかった。
だから美紀が大好きになったのだった。
秀樹と直樹には、兄弟と言う以外格別な感情は持っていなかった。
勿論同級生の大にも。
美紀にとって三人は親友であり、仲間だった。
共に成長するための。
何故この三人ではいけないのか?
答えなど出る筈がない。
祖父が書いた一言。
――美紀ちゃんの好きな人は誰?――
あれを見て正樹を思った。
祖父を見つめながら頭の中では正樹との結婚式を夢に見ていた。
周りで跪く三人組には目もくれないで正樹の元へ走っていたのだ。
それでもそれにより美紀は、本当に正樹を愛していることを確認した。
そしてやはりパパが好きだと実感する美紀だった。