ゆっくり廊下を歩いていると古くさい本の匂いがした。
あたしはそこで足を止める。
『図書室』
そんな看板がかかっているこの教室。
3年の春
たまたま図書室の前を通ると中に桐ちゃんの姿が見えた。
だから桐ちゃんに声をかけようと思った。
けど、中には桐ちゃんの他にもう1人の影が見えたんだ。
それは明らかに女の子だった。
だって、スカートがなびいてたし。
あたしは本棚の影に身を潜め、会話に聞き耳をたてた。
「桐島先生、好きです」
そんな言葉に胸が苦しくなったのを覚えている。
どうやらあたしは告白の場面に居合わせてしまったようだ。
今さら立ち去ることなんてできなくて、
あたしはそのままそこにいた。
胸のドキドキがうるさくて、
2人に気づかれてしまうんじゃないかと心配になった。
桐ちゃん、なんて答えるんだろう