『さて、そろそろ行きますか。
もう夜ですし』
大ちゃんが空を仰ぐ。
大ちゃんに倣う。
「キレイ…だね」
真っ暗な闇には少しだけ欠けた月と無数の星
あたしたちが住んでいる街から決して見えない夜空がそこには広がっていた。
『僕は後悔なんてしてません。
夏希を好きになったことも、
桐島先生の話をしたことも。
後悔先に立たず、ですよ』
大ちゃんはそう呟き歩き出す。
「ね、ね、大ちゃん
そう言えば、なんで真面目な大ちゃんになってるの??」
あたしの涙はいつの間にか完全に引いていた。
そしてさっきから気になっていたこと。
大ちゃんの口調が変わった。
『え?いけませんか?
夏希…前、こっちのほうがいいって言いましたよね??』
「まあそうだけど。
で、なんで??」
『教えるワケねぇーよ、バカ夏希!』
またもや口調が変わる大ちゃん。
うん、器用すぎだね。
帰りの車内の雰囲気は何も変わっていなかった。
別れたあとのカップルではないような、そんな感じ。
大ちゃん、ありがとう
大ちゃんのおかげであたしはなんとか前に進めそうだよ
これからもよろしくね?