「その後、あとから来た仲間が三人を発見して、屋敷に運んだんだが…。雪乃は亡くなっていて、若長は意識不明の重症。もちろん、掟を無視した上に、雪乃を助けられず、若長をも傷付けた紫月は、周りから冷たい目で見られた。…それからだ。紫月が“心”で動くのではなく、命令にすべてをかけるようになっちまったのは」
「……。」
「アイツが若長の命令を無視できない理由は、これだ」
(俺は、アイツのこと…全然知らなかったんだな…)
数日だったが、一緒にいて、なんとなく知ったつもりでいた。
でも、実際には知らないことばかりだ。
名家の、祈光院家の娘であること。
小さい頃から、強い霊気を持っていたこと。
昔は情に厚い、女の子だったこと。
時々見せる、悲しそうな表情の裏にある思い。
「…知らねぇことばかりだ。アイツのこと」
「ついでに教えといてやる。表界の美弥子様…意識がお戻りになったそうだ」
「母さんが…!!よかった」


