謝るどころか、命を助けてくれた恩人だ。 「…紫月のことを恨むか?」 「え…?」 梅橋の口から出た言葉は、意外なものだった。 「あぁ。…心の底から恨めるんならな。でも、…ダメなんだ」 「ダメ?」 「恨みたくても、なぜかアイツのことは恨めないんだ。裏切られたのに、斬られそうになったのに。…憎めないんだ。紫月のことを」 今でもさっきのことを思い出すと、鳥肌が立つほどこわい。 自分に向けられた刀。 紫月の冷たい目。 『許せ……』 鮮明に耳に残るあの一言。