「ったく…。その癖、早く直せよな」
翔真が背中をさすりながら言う。
「そ、そーだよねー…」
優子には、挨拶するとき、怒るとき、照れ隠しのとき…などの状況で、人を叩く癖がある。
女子相手にはさすがに最近は無いらしいが、翔真は昔からの被害者だ。
現在進行形で。
「今日は稽古…あるのか?」
「うーん…。どーだろ。おじいちゃんの気分次第だからなー」
翔真は勉強、芸術、球技など、全てにおいてセンスの欠片もないが、一つだけ一流のものがあった。
それは、剣術。
どのスポーツも弱かった翔真が唯一、絶対に負けないのが剣術だった。
5歳の頃から12年間、優子の祖父である玄克(げんかつ)の下で、優子と共に剣術を教わっている。


