(紫…月?)
「いや…ちょっと話したいことがあって…」
さらに目つきが悪くなる男。
「話したいこと…か。…悪ぃが、紫月は寝ちまってな。用なら明日…」
「…私が何だ?」
「「うおっ!?」」
男の後ろから、ひょこっと顔を出す紫月。
昼間の姿とは違い、刀や武器を持っていないからか、いくらか雰囲気が優しい気がする。
さっきまで寝ていたのか、綺麗な髪に寝ぐせが少しついていて、着物もよれている。
「あっ、悪い…起こしたか?」
「いや、構わん。爽が布団から出た時に、起きたからな」
「…俺のせいかよ」
爽と呼ばれた男は、紫月と親しそうに話す。
(あの紫月が、こんなに親しげに話すなんてな…)
外での紫月は、誰とでも、どこか一線を引いているような感じがした。
時雨や要でさえも、あくまで仕事上の上司と部下のような感じだ。
だが、この男に対しては違う。
何というか…壁がない。
誰にでも引くはずの線が、ないのだ。
そんな翔真の視線を感じたのか、紫月が話しだす。
「あぁ、翔真は初めてか。コイツは、一谷爽だ。ちなみに、こう見えて“黄雷”のトップだぞ」
「こう見えては余計だっつーの…。一谷だ。よろしくな、青華のソード」


