二人の絆が、強いということも。


「私は今回の戦い、御役目を果たすことができません。そんな立場の人間がこんなことを頼むなど、情けない限りですが…」


下駄を脱ぎ、縁側に正座する時雨。


両手を前に出し、丁寧に頭を下げる。


「…!!」



「紫月頭領のこと、よろしくお願いします。…あの方は、いつもすべてを自分で背負おうとするのです。…あの方を一人にしないでください」



紫月の後ろ姿が目に浮かぶ。



小さいながらに、すべてを背負おうとする、どこか寂しげな背中。


自分の犠牲は考えずに、正面から突っ込んでいくところ。



それでいて、なぜか目が離せないところーー。




時雨はそういう紫月の性格を、きっと分かっているのだろう。



だからよそ者の翔真にも、わざわざ正座までして頭を下げるのだ。



「あぁ」




たった一言。



だけど、その一言で時雨は安心した顔になった。