「わる……が、……いは……てくれ……」
(誰だよ…こんな夜遅くに)
おそらく、もう夜中の一時は過ぎている。
普通だったら、外に出ている方がおかしい。
さらに近づいてみると、人数は二人で、声からして男女であることが分かった。
「……ています。…いが、敵だとしたら……してしまいますから」
更に近づくと、だんだんと声が鮮明に聞こえてくる。
(ん?…つーか、この声って…)
月と星だけが、光となる世界であるため、顔はよく見えないが、その声は確かに、時雨のものだった。
(ていうことは…)
隣にいる女は、身長差からして、おそらく紫月なのだろう。
時雨が敬語を使っていることも、頷ける。
顔はもちろん、暗くてよく見えないが。
「すまぬ、時雨……」
「そんな…頭のせいではありません。むしろ、私は頭に感謝しています。」


