「ハァァ…疲れたァ…。俺、苦手なんすよね。あの人」
静まり返った部屋で、一番初めに喋りだしたのは、要だ。
「…なんだよ、あの霊気…。バケモンかよ…」
「フゥ…まぁ、そんなものだ」
やっと息ができたかのように、深呼吸をする紫月。
「上級貴族、祈光院家の姫君であり、黒鷹衆の一、“蒼”の頭領でもあるお方だ。もちろん、実力は若長と並ぶほどと、言われている」
祈光院家の、姫君…?
「って、ちょっと待て。それじゃあ、あの人は紫月の…」
「あぁ。姉だ」
(だから…あのとき…)
『楓…姉様…』
紫月の小さな声が、頭の中でリピートされる。
「つーか、お前…妹だったのかよ…」
世の中、姉妹の二番目は気が強いと言われているが…。
(その通りだな…)
「何を一人で納得しているのだ?」
「あ、いや…別に…」


