「…なんだよ?そんならしくねぇ顔して」
うつむく紫月を、下から覗きこむようにして見る翔真。
「なんでもない」
お人好しで、バカで、後先考えずに直感で行動する。
本来ならば、紫月にとって、一番嫌いな人種のはずだが。
(コイツは…嫌いではない)
できれば最後まで、翔真を巻き込みたくはなかった。
こういう仕事は、常に死と隣り合わせだ。
いつ、どんな形で死ぬか分からない。
だからこそ、翔真を裏切った時に表界に帰ってほしかった。
…傷ついてほしくなかった。
(だが…)
コイツの瞳の奥にある、決意の光。
母親を守るという、強い使命感からなのか。
それを見せられて、「帰れ」なんて言えなかった。


